勤怠の締め作業は、毎月必ずやってくる地味で重い仕事です。今回は、私が事務長を務めるクリニックで、この締め作業をAIと組んで作り替えた実例を紹介します。

金額や数値の実績ではなく、「どういう仕組みにしたか」の手法レベルの話です。中小企業やクリニックであれば、そのまま応用できる部分が多いと思います。

課題:手書きシフト表と勤怠システムの「突合」が毎月の手作業だった

当院の勤怠管理はKING OF TIME(勤怠システム)ですが、シフトの原本は現場で作られる手書きのシフト表でした。すると毎月、締めのタイミングでこういう作業が発生します。

  • 手書きシフト表と勤怠システムの記録を1件ずつ見比べる
  • 打刻漏れ・打刻ミスを探して、本人や現場に確認する
  • 確認結果をシステムに反映する

すべて目視の手作業です。人間が集中力で乗り切る作業は、量が増えるほど見落としが起きやすくなります。しかも勤怠は給与に直結するので、見落としの影響が小さくありません。

取り組み:3つの工程を、毎月1つずつAI化した

一気に全部を変えたのではなく、毎月1工程ずつ導入しました。結果として次の3つの仕組みになっています。

1. 手書きシフト表の読み取りと機械突合

手書きのシフト表をAIが画像として読み取り、勤怠システムのデータと機械的に突合します。

ここで大事にしたのが「機械+目視の二重読み」の原則です。AIの読み取り結果をそのまま信じるのではなく、機械の突合と人の目視という2つの系統でチェックし、不一致がゼロになったことを確認してから先に進みます。AIが読み取りに自信を持てない箇所は、必ず人に確認を回す設計にしました。

2. 打刻エラー検知の毎晩自動化

打刻漏れや異常な打刻を検知するルールを9パターン定義し、毎晩自動でチェックが走るようにしました。

これまでは月末にまとめて発覚していたエラーが、翌日には検知されます。本人の記憶が新しいうちに確認できるので、「先月の◯日、退勤打刻がないのですが……」という気まずいやり取りが減りました。

3. シフトの月次登録をAPI連携で自動化

確認済みのシフトを勤怠システムに登録する作業は、API連携で自動化しました。月180件規模の登録が、数分で終わるようになっています。

学び:「AIが洗い出し、人が判断する」の分担が機能する

やってみて分かったことを3つ挙げます。

  • 全部任せない。AIの役割は「候補の洗い出しと突合」まで。エラーをどう処理するか、例外をどう扱うかの判断は人がやる。この分担がいちばん安定しました。
  • 自信のない箇所は人に回す設計にする。AIは読み取りを間違えることがあります。だからこそ、怪しい箇所を「怪しい」と申告させ、人の確認に回す動線を最初から組み込みました。
  • 導入は一気にやらない。毎月1工程ずつ。現場が慣れてから次に進むほうが、結局早く定着しました。

経営者の方へ:効果はまず「時間削減」より「漏れ・誤りの防止」に出る

勤怠×AIというと「作業時間が減る」ことを期待されがちですが、先に効果が出るのは「漏れ・誤りの防止」のほうでした。

給与は従業員の信頼に直結します。1件の給与ミスが与えるダメージは、数時間の作業短縮よりずっと大きい。チェックを機械と人の二重にすることで「見落としていないか」という不安が減ることが、締め作業の一番の変化でした。

時間削減はその後についてきます。順序としては、正確性が先、効率が後。この順番で設計するのが良いと感じています。


当事務所では、こうした勤怠管理の仕組みづくりについてのご相談も受けています。「自社の締め作業のどこから手をつければいいか」といった段階からで構いません。お気軽にお声がけください。