前回は、賃金・規模・業種と、社会保険の加入条件が一つずつ外されていく流れを読みました。今回は、その流れの中で手が付けられなかった「130万円の壁」と、配偶者の扶養に入っている方の年金(第3号被保険者)のゆくえを考えます。

先に、要点を三つ

  1. 「106万円の壁」と「130万円の壁」は、性質の違う壁です。 前者は保険料とともに将来の年金も増えますが、後者は保険料が増えても基礎年金は変わりません。
  2. 審議会は、まず適用拡大を進めて第3号を小さくしていくことを「基本的な方向性」としました。 第3号そのものをどう見直すかは、意見がまとまらなかったと記されています。
  3. 扶養の範囲で働く方には「当面は今の仕組みのまま。ただし週20時間以上働く方から順に会社の保険へ移っていく」と伝えるのが、実態に近いと考えられます。

なぜ130万円の壁は残ったのか

106万円の壁は、会社の健康保険・厚生年金に入ることで生じる壁でした。保険料はかかりますが、そのぶん厚生年金が上乗せされ、病気で休んだときの手当なども受けられます。

一方の130万円の壁は、会社の保険に入らないまま年収が130万円を超え、配偶者の扶養から外れて、自分で国民年金や国民健康保険の保険料を払うことになる壁です。審議会の「議論の整理」は、こちらは保険料の負担が増えても基礎年金の給付は同じだ、と整理しています。

負担と給付の構造そのものが違うため、106万円の壁のように「条件を一つ外す」だけでは解消しない。今回手が付けられなかったのは、そういう事情だと私は読んでいます。

「まず適用拡大、その先に第3号」という順番

議論の整理は、130万円の壁への対応として、第3号のあり方そのものを見直すか、「壁」を感じながら働く第3号の方が少なくなるよう適用拡大を一層加速するか、のどちらかが基本になると書いています。そのうえで当面は、適用拡大を進めることで第3号を縮小していくのが基本的な方向性だ、としました。

第3号の将来の見直しについては、廃止すべきという意見も、セーフティネットとして必要だという意見もあり、意見がまとまらなかったと率直に記されています。改正法も、第3号の在り方には「国民的な議論が必要」との認識の下、実情を調べたうえで検討するよう政府に求めるにとどめています。

正面から制度を変える前に、会社の保険に入る人を増やし、第3号にとどまる人を自然に減らしていく。そういう順番が選ばれたと読めます。前回見た「週20時間で働く人は会社の保険へ」という流れは、130万円の壁の手前で人を受け止める役割も担っている、ということではないでしょうか。

扶養の範囲で働く方にどう説明するか

扶養の範囲で働きたいという相談は、これからも続くと思います。そのとき「第3号はなくなるらしい」と先回りして伝えるのは、資料の書きぶりから見て早すぎると考えられます。

現実的なのは、次のような説明ではないでしょうか。

  • 扶養の仕組みは、当面は今のまま続く
  • ただし勤め先の規模の条件がなくなっていくので、週20時間以上働く方は、順に会社の保険に入ることになる
  • 扶養に入れるかどうかの年収は、2026年4月から、労働契約の内容から見込まれる額で判断する扱いになった(詳しくは以前の記事)

まとめ

  • 106万円の壁は「保険料も給付も増える壁」、130万円の壁は「保険料だけが増える壁」
  • 審議会は、適用拡大で第3号を縮小していくことを当面の基本的な方向性とした
  • 第3号の見直しは「決まった」のではなく「検討する」段階

次回は、収入の線が消えた後に残る「週20時間」という時間の線を考えます。

扶養の範囲で働く方への説明や、加入の見通しについては、当事務所の無料相談をご利用ください。

参考(一次情報)

  • 厚生労働省「社会保障審議会年金部会における議論の整理」(2024年12月25日公表): https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20241225.html
  • 厚生労働省「『年収の壁』への対応」: https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html
  • 第25回社会保障審議会年金部会 資料1「令和7年法律第74号の概要等」(2025年6月30日): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001592624.pdf

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。制度の方向性に関する記述は、公表資料をもとにした筆者個人の考察です。内容は2026年10月13日時点の公表資料によります。