11月4日、財務省の財政制度等審議会の分科会に、70歳以上の医療費の窓口負担を、年齢によらず「原則3割」とする方向の資料が出されました。
窓口で患者さんから、あるいは高齢の従業員から「いつから3割になるのですか」と聞かれた方もいるかもしれません。今回から3回に分けて、この話題を公表資料をもとに整理します。第1回は、何が提言され、何が決まっていて、何がまだ決まっていないのかを、事実だけで並べます。
先に、教訓(結論)を三つ
- 決まっているのは「見直す」と「年末までに改革工程表」までです。 「原則3割」は財務省の審議会の提言で、対象と時期はこれから決まります。
- 提言は三点セットです。 窓口負担の原則3割、70歳以上だけにある外来特例の廃止、金融所得の勘案を65歳以上へ広げること、の三つが並んでいます。
- いま75歳以上の約7割は1割負担で、3割の方は約7%です。 70〜74歳でも3割の方は約11%です。議論の中心は、この線引きをどう動かすかになりそうです。
11月4日に出た三つの提言
一つ目は窓口負担です。資料は、年齢によらず「原則3割」とすることを目指し、着実に引き上げていくよう求めています。あわせて、低所得の方などの必要な受診が確保されるよう配慮する、という前提も書かれています。
二つ目は外来特例です。70歳以上の方だけに、外来の自己負担に月ごとの上限を設けている仕組みです。資料は、2002年に激変緩和として設けられた経緯を挙げ、廃止を求めています。
三つ目は金融所得です。75歳以上では、配当などの金融所得を負担の判定に反映する仕組みづくりが進んでいます。資料は、これを65歳から74歳の方にも広げるよう求めています。
いまの負担割合
現在の窓口負担は、69歳までが3割、70〜74歳が原則2割、75歳以上が原則1割です。ただし、所得が現役並みの方は70歳以上でも3割です。
厚生労働省の資料によると、75歳以上では1割の方が約7割、3割の方が約7%で、その間に2割の方がいます。70〜74歳では3割の方が約11%で、残りは2割です。「原則3割」の議論は、現役並みの線引きを広げるのか、年齢の区切りを動かすのか、という形で進むことになると読めます。
決まっていることと、これからの日程
政府として決まっているのは、2026年7月に閣議決定された骨太の方針の文言です。原則3割となっている現役世代との間で「年齢によらない真に公平な応能負担」を実現する観点から見直しを行い、そのための改革工程表を2026年末までに作る、とされています。注記には、外来特例の在り方、負担割合の区切りとなる所得の見直し、年齢の引き上げ、マイナンバーを使った所得・資産の把握基盤の整備、の四つが挙がっています。70歳以上を「原則3割」にする、とは書かれていません。
この先の日程は、私の見通しです。年末に改革工程表と来年度の予算案が示され、法律の改正が必要なものは2027年の通常国会に法案が出る、という流れが考えられます。75歳以上の2割負担のときは、法律の成立から施行まで約16か月かかりました。同じ間隔なら、窓口負担が変わるのは早くても2028年度ごろではないでしょうか。
患者さんや従業員に聞かれたら
いま答えられるのは、次のような内容だと思います。「財務省の審議会が提言を出した段階で、誰がいつから何割になるかは、まだ決まっていません。年末に国が工程表を作り、その後に法律の手続きがあります。」
高齢の方ほど、報道の見出しだけで不安を感じやすいものです。決まっている範囲を落ち着いて伝えることが、いちばんの安心につながるのではないでしょうか。
まとめ
- 「原則3割」は財務省の審議会の提言で、閣議決定は「見直す」と「年末までに改革工程表」まで
- 提言は、窓口3割・外来特例の廃止・金融所得の勘案の三点セット
- 窓口負担が変わるとしても、早くて2028年度ごろという見通し
次回は、財務省がなぜこの提案を繰り返すのかを、厚生労働省との役割の違いや人口・世論とあわせて読みます(こちら)。第3回では、日程の見通しと、負担が上がった時に外来で何が起きたかという実績から、開業医への影響を考えます(こちら)。
出典
- 財務省 財政制度等審議会 財政制度分科会(2026年11月4日)資料「社会保障」: https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20261104/01.pdf
- 厚生労働省 第217回 社会保障審議会医療保険部会 資料2-1(2026年10月1日): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001754424.pdf
※本コラムは公表資料をもとにした一般的な情報提供であり、個別の経営判断・法的助言ではありません。制度の内容は今後の決定で変わります。
