この連載では、70歳以上の窓口負担を「原則3割」とする財務省の審議会の提言について、第1回で政府として決まっていることの範囲を(こちら)、第2回で提案が繰り返されてきた背景を(こちら)整理しました。

最終回は、院長の目線で考えます。負担の見直しはいつごろ外来に表れそうか、負担が上がった時に実際に何が起きたのか。見通しと実績を分けて書きます。

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先に、教訓(結論)を三つ

  1. 日程は、年末に工程表、来年に法案、施行は早くて2028年度という見通しです。 75歳以上の金融所得の反映は、これとは別に2029年8月から始める案が示されています。
  2. 2022年の2割化で、対象者の受診日数は2〜3%減りました。 減ったのは主に通院の回数で、眼や筋骨格系の病気では半年後も戻らないものがありました。短期的な健康の悪化は確認されていません。
  3. 一般診療所の外来患者の約4割は70歳以上です。 高齢の患者さんの割合が高い医院ほど、影響は数字に表れやすいと考えられます。

これからの日程と、金融所得の把握

年末に改革工程表と来年度の予算案が示され、法改正が必要なものは2027年の通常国会へ、というのが私の見通しです。2割化の前例では、法律の成立から施行まで1年余りかかりました。窓口負担が変わるのは、早くて2028年度ごろと読めます。

「金融所得まで把握されたら、多くの高齢者が3割になるのでは」という声も聞きます。調べてみると、75歳以上については、2026年の法改正ですでに仕組みが決まっていました。金融機関などが出す法定調書を使い、確定申告していない上場株式などの配当も、保険料と窓口負担割合の判定に入ります。初回の反映は2029年8月とする案です。

ただ、対象として挙がっているのは上場株式などの配当や、特定口座の取引の報告が中心で、預貯金の利子やNISAの中の収益は対象外と読めます。70〜74歳への拡大は、まだ検討の段階です。また、3割に移る人数の試算は、公表資料には見当たりませんでした。「多くの高齢者が3割に」とまでは、いまの資料からは言えないというのが正直なところです。

負担が上がった時、外来で起きたこと

2022年10月の75歳以上の2割化について、厚生労働省の検証では、対象者の受診日数は2〜3%程度減りました。減ったのは主に通院の日数で、1回あたりの診療内容はあまり変わっていません。病気別では眼の病気や筋骨格系の病気で減り方が大きく、白内障などでは半年後も戻らないものがありました。施行の直前には駆け込みの受診も見られました。一方で、その後の死亡率に目立った悪化は出ていないと報告されています。

注意したいのは、受診日数がもともと減っていることです。70〜79歳の1人当たりの受診日数は、負担を変えなくても2008年度から2023年度で約3割減っています。自院の再診が減った時、それが負担の見直しによるものか、もともとの流れなのかは、分けて見る必要がありそうです。

影響が出やすい医院と、備え三つ

患者調査では、一般診療所の外来患者の約4割が70歳以上です。診療科別の年齢構成の公的な表は今回見つけられませんでしたが、75歳以上の通院日数は循環器、筋骨格、眼の病気で多く、内科(循環器)、整形外科、眼科は高齢の患者さんへの依存が高いと読めます。こうした医院では、変化が数字に表れやすいのではないでしょうか。

備えとして、私は三つを考えています。一つ目は、自院の70歳以上の患者さんの比率と、再診の頻度を出しておくことです。二つ目は、窓口で聞かれた時の説明をそろえておくことです。「決まっているのは年末の工程表まで」と、受付の方が同じ言葉で答えられると、患者さんも安心しやすいと思います。三つ目は、高額療養費と外来特例の案内の更新です。この二つは2026年8月から上限が引き上げられており、窓口負担の割合とは別に、すでに動いています。

まとめ

  • 日程は年末の工程表から始まり、窓口負担が変わるのは早くて2028年度ごろという見通し
  • 75歳以上の金融所得の反映はすでに法律で決まっているが、対象は配当などが中心で、3割に移る人数の試算は見当たらない
  • 2割化の実績では受診日数は2〜3%減。高齢の患者さんが多い医院ほど、自院の数字を今のうちに把握しておくと備えやすい

出典

  • 厚生労働省 第218回 社会保障審議会医療保険部会 資料3(2026年10月16日・金融所得の勘案): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001759824.pdf
  • 厚生労働省 第218回 社会保障審議会医療保険部会 資料1(2026年10月16日・受診日数と2割化の検証): https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001759822.pdf
  • 厚生労働省「令和5年 患者調査」推計患者数: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/dl/suikeikanjya.pdf

※本コラムは公表資料をもとにした一般的な情報提供であり、個別の経営判断・法的助言ではありません。制度の内容は今後の決定で変わります。