ここまで三回、勤怠まわりをAIエージェントと作り替えた話を書いてきました(第1回)。今回は、うまくいかなかった話です。
全部を自動にするつもりで進めて、途中で三つの「できない」に突き当たりました。結果だけ先に言うと、その三つがいちばん早く片付きました。できないと分かった瞬間に、やることが決まったからです。
先に、要点を三つ
- できるかどうかは、想像ではなく実際に試して確定させます。 「たぶんできるはず」を残したまま設計すると、そのぶん仕組みが複雑になります。
- できないと分かったら、「無くす」をあきらめて「短くする」に切り替えます。 ゼロにできない作業を、数分に落とすほうが現実的です。
- 最後に人が押すボタンは残していい。 残すと決めたほうが、かえって早く回り出しました。
突き当たった三つの「できない」
一つ目。打刻をしない働き方の人がいます。当院の場合は医師で、決まった日に勤務する扱いです。この勤務形態を、外部からの連携で登録することが私が試した時点ではできませんでした。登録はできたように見えるのに、読み戻すと別の扱いになっている。半日かけて分かりました。
二つ目。前回書いたとおり、すでに打刻がある日には後から勤務予定を入れられません。これは締切の前倒しで回避しましたが、月の途中で発生する変更には効きません。
三つ目。月次の締め処理そのものを、外から実行する手立てがありませんでした。締めは画面から人が行う作業として残ります。
「無くす」をあきらめて「短くする」
三つとも、最初は「どうにか自動にできないか」と考えていました。切り替えたのは、一つ目で半日を費やしたあとです。
打刻をしない勤務の登録は、こうしました。AIが取り込み用の一覧を作る。人がそれを画面から取り込む。月に一度、数分の作業です。ゼロにはなりませんでしたが、もともと一件ずつ手で入れていた作業だったので、実感としてはほぼ消えました。
締めも同じです。自動化はできませんが、前の工程が片付いていれば、締めの日にやることは「異常が残っていないことを確かめて、ボタンを押す」だけになります。前の工程を整えるほうが、締めそのものを自動化するより効きました。
自動化の値打ちは、人の作業をゼロにすることではなく、判断の要らない部分を人から外すことにある。そう考えるようになりました。数分のボタン操作は、判断が要らないぶん、負担としてはほとんど残りません。
早くあきらめるほど、設計が単純になる
もう一つ実感したのは、「いつかできるかもしれない」を残しておくことのコストです。
できるかもしれないと思っていると、その先の設計に分岐が増えます。自動で入った場合の処理と、入らなかった場合の処理。両方を抱えたまま進むと、仕組みは重くなり、動かしてみるまで正しいかどうかも分かりません。
できないと確定させると、分岐が一本消えます。実際、一つ目を「できない」と結論づけたあと、周りの設計が一気に片付きました。試して、駄目だと確かめる作業は、遠回りに見えて近道でした。
AIに何かを任せようとするとき、「どこまでできるか」を調べるのと同じくらい、「どこからできないか」を早く確かめるのがよいのではないでしょうか。なお、ここで書いた三つはいずれも私が試した時点での話で、サービスの仕様は変わります。同じ判断を続けるつもりはありません。
まとめ
- できるかどうかは想像せず、実際に試して確定させる
- できないと分かったら「無くす」をあきらめ「短くする」へ切り替える
- 最後に人が押すボタンは残してよい。判断が要らなければ負担は小さい
- できないことを早く確定させるほど、周りの設計が単純になる
次回はシリーズの最終回で、AIに任せていない領域の話を書きます。
自社の勤怠業務をどこまで自動化するか、といったご相談も当事務所の無料相談で承っています。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「労働時間・休日」(労働時間の適正な把握に関する指針を含む): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。記載した仕組みは当院の運用例で、利用しているサービスの仕様は変わることがあります。
