勤怠ソフトを入れたのに、月末の事務がなくならない。そう感じている方は多いのではないでしょうか。私が事務長を務めるクリニックでも同じでした。打刻はカードで取れているし、集計も自動です。それでも締めの週になると、机の上に紙とExcelが積み上がる。

この数か月、勤怠まわりの仕事をAIエージェントと組んで作り替えてきました。今回から数回に分けて書きます。初回は、手をつける前の棚卸しの話です。

先に、要点を三つ

  1. 残っている手作業は、ソフトの中ではなく「ソフトの外側」にあります。 シフト表をソフトへ入れる、打刻の抜けを探す、例外をどう扱うか決める。この三つが残り続けていました。
  2. 月次の仕事を「転記」「突合」「判断」に仕分けると、AIに任せる範囲がほぼ自動的に決まります。 転記と突合はAI、判断は人。この分け方がいちばん安定しました。
  3. 最初に出る効果は、時間短縮ではなく「漏れ・誤りの防止」です。 勤怠は給与の一次データですから、AIに推定で穴を埋めさせない、という原則を先に立てておくのが肝心だと思います。

ソフトの外側に残っていた三つの作業

棚卸しをしてみると、毎月きまって発生していたのは次の三つでした。

一つ目は転記です。シフトの原本は現場が作る一枚の表で、ソフトの中にはありません。これを毎月、一人ずつ日ごとに入力していく。毎月百数十件から二百件ほどの登録になります。

二つ目は突合です。打刻漏れ、押し間違い、休憩の戻り忘れ。これを月末にまとめて探し、本人に確認して直す。「先月の何日、退勤の打刻がないのですが」という気まずいやり取りが毎月ありました。

三つ目は判断です。急な休み、時間単位の年次有給休暇、特別休暇。表に載らない事情を、どう記録するか決める仕事です。

ソフトが自動でやってくれるのは打刻の集計だけで、その前後は人が担いでいたわけです。ちなみに当院が使っているのはKING OF TIMEですが、この構図はどの勤怠ソフトでも大きくは変わらないのではないかと思います。

転記・突合・判断で仕分ける

この三分類は、そのままAI導入の順番になりました。

転記から手をつけます。理由は単純で、正解がすでに別の場所にあるからです。シフト表という正解があり、それをソフトへ運ぶだけ。判断が要らない作業は、AIに任せても間違う余地が小さい。実際、毎月まとまった時間を取られていた登録作業は、読み取りと確認を合わせても短い時間で終わるようになりました。

次が突合です。毎晩自動でチェックを走らせ、打刻の異常を翌朝には把握できるようにしました。月末にまとめて発覚していたものが翌朝に変わるだけで、確認のやりやすさがまったく違います。本人の記憶が新しいうちに聞けるからです。

判断は人に残します。ここは今も変えていません。AIが出すのは「この人のこの日が変です、本人に何を聞いてください」までで、そこから先は人が決める。

「推定で埋めない」を最初の原則にした

一つだけ、最初に決めておいてよかったルールがあります。AIに推定値で記録を埋めさせない、というものです。

AIは「この人は過去の同じ曜日だとだいたいこの時刻に退勤している」と計算できます。しかしそれは記録ではなく推測です。労働時間の把握は使用者の責務とされており、国の指針でも、タイムカードなどの客観的な記録によることが原則とされています。もっともらしい推定値で空欄を埋めては、記録としての値打ちがなくなってしまうと考えられます。

ですから、AIの出力は「照会リスト」の形にしました。推定値は参考として横に並べますが、本人に尋ねるときの取っかかりであって、そのまま入力する数字ではありません。

まとめ

  • 勤怠ソフトを入れても残るのは、ソフトの外側の転記・突合・判断
  • 「転記・突合・判断」に仕分けると、AIに任せる範囲が決まる。転記から手をつけるのが早い
  • 最初の効果は時間短縮より漏れの防止。勤怠は給与の一次データなので、AIに推定で埋めさせない

次回は、シフト表をAIに読ませる話です。うまくいった部分より、読み間違えた部分のほうが参考になると思いますので、そちらを中心に。

勤怠管理の仕組みづくりについては、当事務所の無料相談をご利用ください。「自社の締め作業のどこから手をつければいいか」といった段階からで構いません。

参考(一次情報)

  • 厚生労働省「労働時間・休日」(労働時間の適正な把握に関する指針を含む): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。記載した仕組みは当院の運用例で、利用しているサービスの仕様は変わることがあります。