前回、勤怠ソフトの外側に残る手作業を「転記・突合・判断」に仕分けた話を書きました(第1回)。今回はその一つ目、転記の話です。
当院のシフトの原本は、現場が作るA4一枚の表です。日付が縦に並び、職員が横に並ぶ。それを見ながら、毎月一人ずつ日ごとに勤怠ソフトへ入力していました。表はきれいに作られています。だったら、人がもう一度読み直す必要はないのではないか。そこから始めました。
先に、要点を三つ
- 転記の正解は、すでに手元にあります。 AIは「読む」係であって、「決める」係ではありません。この役割を混ぜないのが大事だと感じています。
- 機械の読み取りと人の目視、二つの系統で読みます。 全部が一致したことを確かめてから登録する。片方だけで進めると、間違いに気づく機会がなくなります。
- 締切を前倒しすると、システム側の制約そのものが問題でなくなることがあります。 仕組みで解こうとする前に、順番を変えられないかを考えるほうが早い場合があります。
二重読みで突き合わせる
やり方は単純です。AIが表を機械的に読んで一覧にする。同じ表を人が目で読む。二つを突き合わせて、食い違いがゼロであることを確認してから登録に進みます。
当院の表は二百数十のセルがあります。毎月そこを全部突き合わせていて、直近の月は食い違いゼロでした。食い違いが出た月は、どちらかに食い違いの元があります。AIが読み違えていることもあれば、人が見落としていることもある。どちらであっても、登録前に分かるのが値打ちです。
読み取り自体は、もう実務に耐える水準にあると感じています。表の罫線や文字の色といった手がかりまで使えるので、書式が整った表であれば、そこまで苦労はしません。難しいのは精度そのものより、次に書く「読めてしまうこと」のほうでした。
いちばん危なかったのは「数字が書いてある」だけの誤読
先月、危ういところでした。表の余白に、勤務とは関係のない短い注記が手書きで添えられていたのです。そこに数字が一つ含まれていました。
AIはその数字を拾い、勤務パターンの番号だと判断して、登録の対象に入れていました。人の目視と突き合わせたところで食い違いが出て、気づきました。もし機械だけで進めていたら、その職員に存在しない勤務が一日ぶん登録されていたことになります。
対策は二つ入れました。一つは、休診日は最初から対象外にすること。もう一つは、あらかじめ決めた記号・時刻・数字を全部取り除いて、それでも文字が残るセルは自動で判定せず、人に回すことです。
数字を見つけたら勤務パターン、という読み方が危ない。AIは書いてあるものを素直に読むので、「これは関係のない書き込みだ」という文脈の判断は苦手です。そこを人に戻す動線を最初から組んでおく、というのが学びでした。
締切を前にずらしたら、制約が消えた
もう一つ、仕組みではなく運用で解けた話を。
当院が使っているソフトでは、すでに打刻が入っている日に、後から勤務予定を登録することができません。私が試した時点ではそういう仕様でした。月の途中で登録しようとすると、その分は手作業に回ります。
最初はこれをどう回避するかを考えていたのですが、答えは単純で、前月末までに登録を終えることでした。月が始まる前なら打刻はまだ無いので、制約に当たりません。締切を数日前倒ししただけで、手作業に回る分がなくなりました。
システムの制約にぶつかったとき、仕組みで乗り越えようとすると時間がかかります。順番を変えるだけで消える制約もある、というのは覚えておいて損がないと思います。
まとめ
- 転記の正解は手元にある。AIには読ませるだけで、決めさせない
- 機械と人の二重読みで、食い違いゼロを確認してから登録する
- AIは関係のない書き込みも素直に読む。自動判定せず人に回す動線を作っておく
- 制約は仕組みより先に、順番を変えて消せないかを考える
次回は、打刻の抜けを毎晩チェックする話です。
シフト登録や勤怠の締めの進め方については、当事務所の無料相談でもご相談いただけます。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「労働時間・休日」(労働時間の適正な把握に関する指針を含む): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。記載した仕組みは当院の運用例で、利用しているサービスの仕様は変わることがあります。
