前回の記事で宣言した「AIエージェントと社労士事務所を運営する実験」。その第一号である当サイトのリニューアルが、実際にどう進んだのかを記録しておきます。

結論から言うと、朝に方針を伝えてから、翌日にはドメイン切替まで完了しました。ただし、一直線に進んだわけではありません。つまずきも含めて、時系列でお見せします。

朝:方針を伝える

私がAIに渡した指示は、要約するとこれだけです。

  • 今のWordPressサイトを抜本的に作り変えたい
  • 情報量は維持しつつ、スマホでの見やすさを最優先
  • AIが自ら発意して更新していく体制にしたい
  • コストは極力かけない

ここで大事なのは、「どう作るか」は指示していないことです。WordPressを続けるか別の基盤に移るかも含めて、AIに検討させました。

午前:調査班の並列派遣

AIはまず、複数の「調査班」を同時に走らせました。

  • 世の中の士業サイトのベストプラクティス調査
  • AIエージェント活用で評価されている事例の調査
  • デザイントレンドの調査
  • 移行先候補(静的サイト・各種ホスティング)の技術調査

人間なら数日かかる下調べが、並列処理で数時間に圧縮されます。この「調査を惜しまない」進め方は、AIと組む大きな利点だと感じています。調査の結論として、AIが提案してきたのはWordPressをやめて静的サイトに移行する案でした。

  • 表示が速く、スマホ対応を根本から作り込める
  • サーバー側の仕組みが不要になり、保守の手間とセキュリティリスクが減る
  • ホスティング費用が無料枠に収まる

私はこの提案を承認しました。判断にかけた時間は数分です。

午後:設計と実装

ここからはAIの独壇場です。サイト生成の仕組みをゼロから書き、旧サイトの記事を移し、デザイン案を私に見せて修正指示を受ける。このサイクルを何度か回しました。

私が出した修正指示は「質素すぎる、先進性がほしい」「クリニックが青基調なのでその流れを踏襲」「私の写真は不要」といった感覚的なものばかりですが、AIはそれを具体的なデザインに翻訳してきます。

お問い合わせフォームも同日中に実働化しました。送信内容がメールで届き、台帳にも自動記録される仕組みです。

翌日:ドメイン切替

一番緊張したのはここです。ドメインの向き先を旧サーバーから新サイトに切り替える作業は、手順を誤るとメールが止まります。事務所の実務でメールが止まるのは致命傷です。

AIが提案した手順は「メールの経路を先に固定してから、Webの向き先だけを切り替える」という段取りでした。結果、メールは無傷のまま、新サイトへの切替が完了しました。

つまずいたこと(隠さず書きます)

きれいに終わった話ばかりではありません。

その1:リンク切れの誤診が続いた。 切替後、一部のコラム記事が開けない不具合が出ました。AIは一度「直しました」と報告してきましたが、実際には直っていない。原因は複合的で、リンクの書き方の問題に加えて、ブラウザが古いページを最大1時間覚え続ける設定が重なっていたため、「直した/直っていない」の認識が私とAIでずれ続けたのです。3回目の指摘で「徹底的に調査して」と伝え、ようやく根本原因までたどり着きました。

その2:認証まわりは人間の出番が多い。 各種サービスへのログインや権限の承認は、セキュリティ上AIに任せない設計にしています。そのため「ここで私がログインする」という待ち合わせが何度も発生しました。これは不便さではなく、意図した線引きです。

この2つから得た教訓は明確です。「AIの『直しました』を鵜呑みにしない。機械的な検証をセットにする」。今回の件のあと、サイト生成時に全リンクを自動検査して、問題があればビルド自体を失敗させる仕組みを入れました。同じ間違いを二度させないところまでやって、初めて「直した」と言えます。

かかった費用

  • ホスティング費用:0円(無料枠内)
  • ドメイン維持費:年数千円(従来どおり)
  • AIの利用料:月額課金の範囲内
  • 外注費:0円

従来なら制作会社に数十万円で発注し、数週間〜数か月かかる規模の作業です。もちろんプロの制作会社と同じ品質だと言うつもりはありませんが、一人事務所の情報発信基盤としては十分すぎる仕上がりだと考えています。

この経験は労務相談にどう活きるか

当事務所がこの実験をオープンにしているのは、同じことが多くの中小企業で再現可能だと考えているからです。

ウェブサイトに限らず、「外注していた業務」「手が回らず諦めていた業務」のいくつかは、AIとの分業で内製できる時代になりました。一方で、AIに任せる範囲が広がるほど、「どこに人の確認を残すか」「失敗したとき誰が責任を持つか」という業務設計と労務管理の問題が必ず出てきます。

そこにこそ、実際に自分の手でAI運用を回している社労士の出番があると考えています。「うちの業務ならどこから手をつけられるか」という段階のご相談も歓迎です。

次回は、この実験サイトに搭載を準備している「AI相談員」の開発過程をお話しする予定です。